人に慣れる子と臆病な子

ハリネズミ、人に慣れる子と臆病な子

ハリネズミを多頭飼いしていると、良くも悪くもあの子とこの子を比較することが増えて、ひとりひとりにかなり性格の違いを感じるようになります。しかもそれがなかなか単純じゃなかったりして……。今回は2名、対称的なタイプを取り上げてみます。

臆病な子、音ちゃん

ハリネズミの音ちゃん
SNSなどで見かける写真や映像から、ハリネズミを人なつっこい動物だと勘違いする方も多いのですが、大半のハリネズミは臆病で人に慣れません。
実際にお迎えしてみて、「あれ?こんなに警戒してばっかりなの?」と、理想と現実の差に頭を抱えているハリ飼いさんもいるはず。

でも安心してください。ハリんちにも臆病な子がいます。今回はハリんち随一のビビり、音ちゃん(執筆時1歳6ヶ月)の性格と接し方について紹介します。

YouTube版があります

音ちゃんのケージを掃除しながら性格について解説した動画を公開中です。内容はこの記事とだいたい同じですので、お好きなほうをご覧ください。


臆病なのは生まれつき

音ちゃんは姫ちゃんの2回目の出産で生まれた子。2名生まれたものの1名はすぐ亡くなってしまったので、一人っ子のように育ちました。体は大きめで生まれたこともあり順調に成長しましたが、授乳時期から臆病さをうかがわせるリアクションを見せていました。

たとえば生後20日目、ママが様子を確認するために触っただけでビックリしてハリを立てました。
ビックリしてハリを立てたハリネズミの音ちゃん(生後20日)

そして生後44日目、慎重に抱っこをしてみたところ、音ちゃんは出された手に一瞬ビビってハリをやや立てて、抱かれる瞬間に後ずさりするような行動を取りました。

続いて生後56日目。姫ちゃんがへちまで遊びだしたところ、その勢いにビックリしたのか頭を隠してフシュフシュしました。

人工的な光も小さいときから現在までかなり嫌いです。明るくするとすぐ暗がりを探して潜り、なかなか出てきません。

臆病な子には「さわらない」ことが大事

こういう臆病な子に少しでも心を開いてもらおうと思うなら、とにかく「触らない」ことが大切です。音や光を嫌うのはもちろんですが、何より人間が人間の都合で抱いたり触ったりすることで、その子の臆病さがどんどん膨らんでしまうのです。

どうしても触らなければいけない時を除いて、基本的には触らずに、その子が安心できるように接する。そうしていると、そのうち少し心を許してくれるようになります。

音ちゃんの場合、性格がほぼ見えた2カ月以降、必要がなければ触らないようにしています。

なるべく人間主体の行動を控えて、ハリちゃんの行動を引き出すように工夫して接していると、ハリちゃんのほうから少し扉を開いてくれるようになります。

触らないためには容器が便利

極力触らないようにするためのアイデアとして、砂場容器など底のある容器に入ってもらって、容器ごと移動するという方法も覚えておくといいかと思います。

ケージの掃除中に別の場所にいてほしいとき、容器の真ん中にフードを置いて誘導して、入ったら容器ごと別の場所に移動してケージの掃除を続ける、という要領です。

体重を量るときは、容器とフードをスケールの上に置いて0表示にしてハリちゃんに乗ってもらえば、さわらずに体重測定ができます。
容器とフードをスケールに置いて0表示に
ハリちゃんに容器の中に入ってもらって容器ごとスケールに置けばさわらずに体重が測れる

機嫌がいいときは寄ってくることも

掃除中に寄ってきたハリネズミの音ちゃん
音ちゃんの場合、けっこう気分屋さんで、20~30%ぐらいの確率で機嫌がいい日があります。そういう日は、掃除中にハウスから出てきて寄ってきてくれたりします。

人間が何かやっているときに寄ってくるというのは、人間に対して安心している証拠ですが、音ちゃんの場合、機嫌がいい日だけの限定です。

ちなみに、寄ってきてくれても触ったりはしません。やさしく声をかけたり、おやつをあげたりして点数を稼いでいます。

男の子にも厳しくてうまくいかない

言い寄ってきた男子にかみつくハリネズミの音ちゃん
音ちゃんの触られ嫌いは、困ったことに男の子に対しても発揮してしまいます。これまで、花くんと大吉くんがカップリングに挑みましたが、どちらもあえなく撃沈。

音ちゃんのヒステリックな拒否ぶりを何度も見て、心底いやなんだなと実感。音ちゃんにはママになってもらうのをあきらめました。

これから変わってくる可能性もある

音ちゃんの臆病な気質は生まれつきかなと思っていますが、年齢を重ねることでやわらかくなる可能性もあります。実際、ハリんちでは過去3名ほど、1歳~2歳にかけてフレンドリーになった子がいます。ハリちゃんに負担をかけないように日々を過ごして、1年2年とかけて心を開いてくれるようになると、飼い主としてはとても感慨深いです。
今、臆病な子の飼育で悩んでいる方には、ぜひあきらめず、ハリちゃんの立場に立って接してあげてほしいと思います。

活発で人慣れしている子、元気くん

ハリネズミの元気くん
さて、次は活発な子を取り上げます。お迎え時から片耳がない、元気くん(執筆時3歳5ヶ月)の性格を解説します。

YouTube版があります

音ちゃん同様、元気くんの性格について、ケージの掃除の様子を見ながら解説した動画です。


とにかく活発

さて、元気くんの性格ですが、小さい頃から現在までずっと、ホントに活発です。夜は6時頃から動き始めて、休憩や昼寝を挟みつつも朝3時ぐらいまでガンガン運動します。運動量はハリんちの子たちの中でもいちばん多いと思います。
気分や調子のムラも少なく、触っても気にしません。ノリが高まってきたり、おやつや女の子など、目的があるときは自分から手に乗ってきます。とても飼いやすい子です。

夜行性なので夜が元気なのはもちろんなのですが、この子は朝もけっこう元気です。朝ケージの掃除中、起きたらウロウロし出して、勝手にケージの外に出て遊びに行きます。ほぼ毎日そんな感じです。

好奇心旺盛だが臆病な気質も見え隠れ

探検中のハリネズミの元気くん
男の子は特に好奇心旺盛で、とにかくいろんなところへ探検に行きます。

そういう面では勇敢で物怖じしない性格を感じますが、臆病な部分がないわけではありません。特に物音にはとても敏感に、反射的に反応します。大きな声の人が近くで話していると、絶えずビクンビクンとしていて気の毒な気持ちになるほどです(店舗では大声での会話は控えていただくようお願いしています)。

また、誰もいない店内で気持ちよさそうにホイールで遊んでいるとき、人が店に入って来ただけで遊ぶのをやめて、ホイールの上で縮こまります。姿を見せて声をかけたら「なんだおまえか」とばかりにまた遊び始めたりしますが、毎回そういう感じなので、根は繊細です。

人間との関係

人間にアピールするハリネズミの元気くん
元気くんは自分の気持ちに正直な印象で、人間からするとわかりやすいです。単純に自分が楽しくないと感じたり、これ以上粘っても何ももらえそうにないと思ったらすぐ寝てしまいますし、呼ばれても無視します。
人間の使いどころを心得ていて、食べ物がもらえるときや、女の子のいる場所に連れて行ってほしいときなどに、アイコンタクトと激しい動きで人間に呼びかけます。

異性へのアプローチ

うまく異性を口説き落としたハリネズミの元気くん
女の子に対するアプローチでは、他の男の子たちの交尾と比較して、かなり上手だということに気付きました。なんというか、モタモタしたりすることなく、うまーく最後まで持っていくんです。最初はかがむような姿勢でスルスルと回り込んでアピールし、背面を取ったと思ったらサッと交尾。テクニシャンですね。

同性(オス同士)の関係

オスには厳しいハリネズミの元気くん
一方で、ハリネズミのオス同士の関係ではとても厳しい一面を持っています。オスだとわかると冷徹で厳しい態度を取ります。もし相手が近づいて来たら、ピタッと動きを止めて相手に集中して、絶妙なタイミングで相手を制するように素早く噛み付きます。

どんな性格の子でも接し方の基本は一緒

2匹の対称的な性格について話し終えてみて、実は接し方の基本は一緒なんだよな、と気付きました。
それは、どんな子に対しても人間中心でアプローチせず、その子と対話するように、反応を確認しながら接することです。その子によってボーダーラインは違いますが、人間側はそのラインを探してヒット&アウェイを繰り返す。これが正しい接し方だと思っています。

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