冬の寒さ対策5つのポイント(2022年版)

ハリネズミを守る!冬の寒さ対策5つのポイント(2022年版)

日本の冬の寒さは特に苦手なハリネズミ。寒さ対策のポイントはたくさんありますが、今回は室温、床温、すきま風、寝床、湿度という5点について、実際に飼育している中での実感を中心に考えてみたいと思います。

YouTube版もあります

テキスト版と内容はほぼ同じですが、お好きなほうをどうぞ。


室温

温度計

定説は25〜30℃あたりですが、実感値としては、最適温度は28〜31℃あたりではないかと感じています。朝、室温がこのくらいの日は目覚めが良く、颯爽とハウスから出てきて「ごはんくれ」アピールをすることが本当に多いからです。

若い子の場合、25℃だろうと30℃だろうと元気いっぱいなことが多いですが、年齢を重ねた子の場合、25℃では明らかに寒そうにしていたり、26〜27℃でも出てくるのがおっくうそうにしていることが多いです。

31〜32℃でも夏眠はしなかった

定説では30℃を越えると夏眠すると言われています。でも実際は、真夏に室温が31℃、32℃になっても夏眠はせず、むしろ元気な印象でした。

これは、ほどほどの設定温度でエアコンを稼働していたときに、日差しが強すぎて思ったよりも室温が上がってしまったときに気付いたことです。もしかしたらうちの子たちだけかもしれませんが、一例としてうちではそのような実感に至っています。

室温維持の最適解は狭い部屋

問題は真冬。冬の室温維持は本当に大変です。ハリんちでも試行錯誤を重ねてきましたが、現時点での最適解は、飼育部屋を狭くして無風の暖房を設置し、サーモスタットで温度管理に狂いが出ないようにすることです。

具体的に説明します。
バー店舗では店の1/3、4畳程度のスペースに執筆時点で5名が暮らしています(間取り的にはもっと暮らせます)。
バー店舗内でハリネズミたち5名が暮らすスペース

このスペースとそれ以外のスペースは、天井から床まで覆い隠せる厚めの断熱カーテンで区切ることができるようにしていて、カーテンを閉じると気密性の高い約4畳になります。
遮光カーテンで天井から床まで覆って飼育部屋を狭くする(途中)
遮光カーテンで天井から床まで覆って飼育部屋を狭くする(完了)

ベストはビニールカーテン
おそらくベストなのは透明なビニールカーテンだと思います。ハリネズミは夜行性とはいえ、日の出・日の入りの明るさが恒常性(ホメオスタシス)の維持に役立つと思われるからです。

お店では、冬場は基本的に日の出前にお世話に行って、室内を十分に温めてからカーテンを開け、日光を取り入れるようにしています。もちろん、寒さが厳しい日や時間的に融通が利かない日は日中もカーテンを閉めて保温を優先することもあります。

カーテンの内側には無風暖房のオイルヒーター2台、加湿器2台、電気毛布を設置しています。
オイルヒーター2台
オイルヒーターはサーモスタットがしっかり効くRHJ65L0915をメインに、HJ0812を補助で使っています。

加湿器
加湿器はHV-P55-Wを2台。真冬でも湿度40〜50%を維持できて、水は8〜10時間持つのでなかなか重宝しています。

電気毛布
電気毛布は数種類使っていますがメインは広電のものです。

これで秋口〜真冬〜春先まで常時27〜29℃、湿度40〜50%という環境を保つことができるようになりました。

ハリんちの基本的な暖房設備はオイルヒーターと電気毛布で、カーテンを開けなくてはならないバー店舗の営業時間中だけエアコンの暖房をつけています。

後述しますが冬場は特に「風」も好ましくないと考えているので、暖房設備としては風が起こらないものがオススメです。オイルヒーターと電気毛布の他には、暖突(遠赤外線ヒーター)やヒートランプなどもあります。

床温

電気毛布の温度設定

低体温症

冬場、いちばん気をつけなくてはいけないのは低体温症。寒くて体が冷え、体が麻痺したように動きにくくなってしまうというものです。

ハリネズミは寒すぎる環境に置かれると、まず暖かい場所を探しに行き、見つからなければ丸まって体温を維持しようとします。しかし丸まったところで寒さには無力。お腹から足から冷えてしまうので、じっと暖かくなるのを待つということになります。

放っておけば当然風邪を引いたり副鼻腔炎になったりと良いことはありません。もし低体温症にしてしまったら、カイロを挟んだ布でおくるみのようにくるんだり、スキンシップを嫌がらない子なら手を当てて、しっかり暖めてあげてください。
ハリネズミを布でくるんで暖めている様子
※イメージ写真です。実際は元気な子(咲ちゃん)を布にくるもうとしているので逃げようとしています

床温管理で低体温症予防

この低体温症を避けるためには、室温管理に加えて床温管理を行うのがオススメです。

明け方4時5時ぐらい、冷え込んでしまう日は一時的に室温がガクッと下がります。このとき、ヒーター類が頑張って室温を上げますが、外壁⇔内壁の温度差、すきま風などの影響で目標温度まで上がりきらない場合もあります。

そこで床暖房が役に立ちます。あらかじめ保温してあり、室温よりは変動幅が小さいので、ハリちゃんは床から暖を取って安心して眠れます。

ただし床暖房は保温してしまうため、思ったより温度が上がるなど、実際の床温管理は難しいのも事実です。そこでハリんちでは、ハリちゃんたちが良く寝床にする数カ所を放射温度計で測り、設定を調整しています。真冬でも最低26℃は確保できて、最大29〜30℃までに収まるようにしています。
放射温度計で床温を測定
※温度計の測定部を床に向けてボタンを押して測ります。咲ちゃんが邪魔をしに来ています

また、そもそもハリネズミは起きている時でも床が暖かいと安心する様子です。以前、バー店では冬場簡易ヒーティングマットを敷いてお客さんと接してもらっていたのですが、そうすると奥に引っ込まず、マットの上でおとなしくしていてくれる子が多かったのです。

床暖の設置では、念のため温度勾配が出るように工夫しておくとなお良いでしょう。暑すぎた場合に逃げ場がないとハリちゃんも困ってしまいます。

床暖を敷かない場所をつくるのでも良いですし、床暖の上に丸太ハウスを伸ばしたものを置いたりするだけでも温度勾配がつくれます。暑い、寒いと場合に応じて移動してくれるはずです。
ハリんちでは強化ダンボールでつくった背の低いハウスを置いていて、その奥には綿布の寝床を置いています。より暖かいのは綿布の上で、暑ければダンボールのほうに移動すれば少し温度が下がります。姫ちゃんは冬場この2箇所をよく移動しながら寝ています。
温度勾配の例。奥の綿布と手前のダンボール床で温度が変わる

すきま風

(イメージ)窓から吹き込む冷風
実は一番やっかいな敵は冬のすきま風です。エアコンの風も同じで、暖気と冷気が入り交じって風になり、ハリちゃんに継続的ダメージを与えます。

温度変化の少ない中央アフリカが故郷のヨツユビハリネズミですから、冷たい風はやっぱり体にこたえます。すぐ副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)を発症してしまいますし、放っておくと蓄膿が悪化して鼻ちょうちん、さらに進むと肺炎まで。

慢性化しやすい副鼻腔炎

ハリんちでも経験済みですが、ハリネズミは副鼻腔が長いこともあって、副鼻腔炎が慢性化すると治療が困難になります。

慢性副鼻腔炎の子は、ちょっとしたことでくしゃみをしますし、ちょっと寒い日には青緑の鼻水、いわゆる「青っぱな」を出したりもします。ちなみに、獣医さんによると副鼻腔炎だけであれば深刻なものではなく、「慢性化してしまったら、ある程度個性として受け止めて付き合っていくしかない」とのことです。

対策は簡単ではない

すきま風対策は難易度が高いです。人間とハリネズミでは、体の大きさも、風を受ける位置も違うので、どこからどのくらい風が来ているのかを調べるのは簡単ではないからです。

また、特に古い家屋では、すきまをひとつ塞げば今度は別の場所からすきま風がというように、イタチごっこになる面もあります。

そこでハリんちでは先述のように天井から床までカーテンで区切って飼育部屋を狭くしていますが、これはなかなかお金がかかります。

一般論として最も有効なのは、水槽タイプのケージを使うことでしょう。床と側面がぴったりくっついて、上だけ開いているケージであればすきま風は入りません。構造的にはカスタムオーダーのアクリルケージも同じく有効です。

寝床

寝床のハウスと寝袋
ここまでの解説でほぼほぼ寒さ対策は終わっているのですが、最後に念のため、寝床についても触れておきます。

もし広いケージで伸び伸び育てている場合は、風の通り道にならない場所に寝床の入口を置く、これだけです。

幅70〜80cm程度の一般的なケージで育てていて、ケージ自体に防風対策が施されていれば、寝床には特別な対応はいらないと思います。

ただ、温度調節に便利なように、冬場だけは寝袋を使用したほうがいいかもしれません。ちなみに、寝袋にはフリースが利用されることが多いですが、フリースは静電気を帯びやすいため、ハリんちでは基本的にコットンのものを使っています。

湿度

加湿器
最後は湿度。最後にしたのは重要度が一番低いと思うからです。

結論から先に言いますが、湿度は夏の高湿よりも冬の低湿を気にすべきです。

夏はハリんちでも除湿機で湿度を40%に保つようにしています。ただ、過去に除湿機を使わず過ごした夏もあって、除湿をしてもしなくてもハリちゃんたちの調子に変化なし、という印象です。
除湿機
うちで使っているのはCM-P100-Wです。コンプレッサータイプなのでちょっと駆動音がうるさいですが、除湿効果は抜群。タンクも大きめで半日に1回水を捨てればOKです。

一方、冬は低湿環境を放っておくと明らかに皮膚が乾燥してフケが増えたことを確認しています。また、ウイルスの活動が活発化するので感染症の心配が増えます。

加湿することで体感温度も上昇するため、冬の加湿はマストだと思います。ハリちゃんたちのため、しっかり加湿してぬくぬくな環境をつくってあげましょう。

寒さ対策について、ハリんちの実感ベースでお話ししてみました。ここで紹介したことはあくまで一例で、正解はひとつではないと思います。参考になれば幸いです。

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