冬の寒さ対策に使える商品はいろいろあります。室内を暖めるエアコンやヒーター、ケージ床を温めるパネルヒーターや電気毛布。そして、ケージの上部からケージの中を温めるという方法もあります。今回は、本来は虫類や両生類向けの上部ヒーター「暖突」の使用感を紹介します。
目次
YouTube動画版もあります
内容は下記テキスト版とほぼ同じですので、お好きな方をどうぞ。
暖突の基本情報
暖突には暖突S(13W)、暖突M(32W)、暖突ロング(32W)、暖突L(57W)と4種類のサイズバリエーションがあります。今回はいちばん大きい暖突Lに絞ってレビューします。サイズと暖房効果を考えると、実際ハリちゃんの飼育で使えそうなのはこのLだけではないかと思うためです。
- サイズ:幅400×厚さ21×奥行き250mm
- 電源コードの長さ:約1メートル
- 消費電力:57W
- メーカー検証の温度データ(環境温度23.0℃に置いた90cm水槽内の温度測定):不織布表面 89.9℃、下10cm 29.8℃、下20cm 29.2℃、下30cm 29.0℃
暖突は遠赤外線の輻射熱で上から下へ温めるというちょっと変わったヒーターです。そもそも暖かい空気は下から上に行くのでは?と思うところですが、販売元のみどり商会の説明に、「特殊断熱材と技術的工夫で輻射効果を増大させ、熱量の約90%以上を下方へ放射させます」とあります。そう言われると試してみたくなりますね。
風を出さずに輻射熱で空気を暖めるヒーターという点ではオイルヒーターに近いところがあります。もちろん、オイルヒーターに比べたら暖突の暖めパワーは限定的ですが、ハリちゃんのようにケージという空間の中だけであれば、効率的に空気を暖められるはずです。また、エアコンやファンヒーターの場合、湿度低下やほこり発生などの欠点がありますが、暖突にはその心配はありません。
ハリんちは超多頭飼いなので、お部屋の空気をまるっと暖めてしまったほうが効率的なのでオイルヒーターを使っていますが、住宅事情によっては暖突のほうが効率的になる場合もありそうです。
パッケージ内容
暖突の製品パッケージに入っているのは、暖突本体(AC電源コード一体型)、短いネジ6本、長いネジ6本、ワッシャー6個、プラスドライバー、取扱説明書(保証書付、保証は購入から6カ月間)です。
取り付け方
暖突は、ヒーターのパネルをケージ上部のワイヤーに固定して、AC電源に接続して使います。
シャトルマルチ R70への取り付けは難航
早速、三晃商会の70cm幅のケージ、シャトルマルチ R70の天板ワイヤーに取り付けます。暖突をケージワイヤーの下に置いて6箇所あるネジ穴にワッシャーをかませてネジ留めを・・・とやっていたら・・・。
なんと、ワッシャーが小さくてワイヤーのすき間を通り抜けてしまい、留まりません。
R70の天板のワイヤーピッチは12mm(ワイヤー間は17mm)で、暖突付属のワッシャーは直径15mm。なるほど、ちょっとズレただけでワッシャーごとネジ留めが外れてしまうは当然です。
ホームセンターでネジ留め用のプレートを購入
暖房器具なので、固定できないと大変なことになります。そこで、ホームセンターで汎用のネジ穴付きプレートを6枚買ってきました(1枚税込31円と格安です)。
参考までに、暖突に付属のネジは穴径(φ)3mmでOKです。
Amazonには、この写真と同じプレートは売っていませんでした。下記は穴径3φの類似品です。
このプレートをワッシャー代わりに、ケージ天板に無事固定できました。
電源コードはシャトルマルチ天板の角から出す
ここで、電源プラグ部分はワイヤーのすき間より大きいので、シャトルマルチ R70の天板と側面を固定する前に、暖突の電源コードを外に出しておかなくてはなりません。オススメの場所は天板の角で、少しだけすき間が空いています。
ちなみに、電源コードは1メートルとかなり短いです。設置場所によりますが、延長タップが必要なケースが多いと思います。
暖突の暖め効果をテスト
では暖突の実力のほどを検証してみましょう。
今回、検証場所として選んだのはキッチン。お風呂場も近くて、換気扇が常時回っていて風が通ります。飼育には最悪の環境ですが、あえてこうした厳しい環境でテストしてみました。
- シャトルマルチR70のケージ上に暖突Lを取り付けて、暖房を一切使っていないキッチンの床に置く
- 部屋全体の温度、ケージ上(暖突の上)の温度、ケージの中(ホイールの乗り場上)の温度、ケージ床の温度、の4箇所を、暖突を付けてから30分、1時間の2回測定
- 念のため、ケージ周囲の温度変化を確認し、熱くなりすぎないか確認
検証結果:思ったより暖まらない
- 室温:16.8℃(検証開始時)→16.6℃(30分後)→16.6℃(1時間後)
- ケージ天板(暖突上)の温度:17.7℃(検証開始時)→19.9℃(30分後)→26.0℃(1時間後)
- ケージ床の温度:17.5℃(検証開始時)→19.9℃(30分後)→20.6℃(1時間後)
- ホイールの乗り場の温度:17.7℃(検証開始時)→18.7℃(30分後)→19.1℃(1時間後)
- ホイールいちばん上の温度感:ほんのり暖かい程度
厳しい環境でのテストとはいえ、予想よりも温度が低かったですね。ホイールの上よりもケージ床のほうが温度が高くて室温との差が+4℃、これがひとつの目安なのかなと思います。同時に、天板のところはそれほど温度が上がりませんでした(室温との差+9.4℃)。
熱の出方としては、ケージの中に手をかざしてみると、確かに上から下に向かって暖かさが伝わってくるのがわかります。風が出ているわけではなく、熱だけがじわっと伝わる感じです。
追加検証:綿の大判バスタオルでケージを覆ってみた
天板の温度が心配するほど上がらなかったこともあるので、今度はハリんちでいつもやっているように、ケージを布で覆って温度変化を検証してみることにしました。
検証結果:そこそこ暖まるかな?
バスタオルで覆ってから1時間後、2時間後の温度チェックをしました。つまり最初から数えると3時間運転した結果ということになります。
- 室温:16.8℃(1時間後)→16.8℃(2時間後)
- ケージ天板(暖突上)の温度:28.5℃(1時間後)→29.5℃(2時間後)
- ケージ床の温度:23.6℃(1時間後)→24.1℃(2時間後)
- ホイールの乗り場の温度:22.0℃(1時間後)→22.0℃(2時間後)
- ホイールいちばん上の温度感:ほんのり暖かい程度
ひとつだけはっきりと言えるのは、「暖突だけでハリちゃんが冬を越す」はまず無理だろう、ということです。
室温との差で考えると、2時間後のケージ床が+7.3℃、ホイールの乗り場が+5.2℃。つまり、室温が約20℃の部屋で使うならば暖突だけでOK、ということになります。でも、冬場暖房を使わず20℃を保てる部屋って…なかなかなさそうです。
天板付近はだいぶ暖かいので、その部分の熱を逃がさないように、たとえばこたつ布団みたいな厚くて保温性の高い布をかけるといいかもしれません。
それでも、やってみて温度をチェックして、大丈夫かどうか確認する必要はあると思います。
「床に電気毛布を敷けば大丈夫では?」と思う方もいるかと思いますが、経験上、ハリちゃんには室温と床温の両方が大切で、暖突と電気毛布を併用して床温が27℃とかに上がったとしても、室温が22℃とかだとハリちゃんの活動量が減ってしまいます。
今回検証で3時間連続運転を行いましたが、消費電力は57Wと低いので当然ではあるものの、電源プラグの部分が熱くなったりはしませんでした。
補助暖房として、ケージへの固定さえきちんとしておけば安心して使えそうです。
入手先と価格
ハリんちでは、先に紹介した金属プレート6枚をセットにして販売しています。
ハリんちSHOPオンライン(※暖突は仕入れ準備中です)、および大阪中崎町「ハリネズミバー ハリんち」併設のハリんちSHOP実店舗(※在庫希少ですのでお問い合わせください)の両方で販売しています。
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