ハリネズミの繁殖・交配データとして、2021年5月7日に出産したハリンちゃんと赤ちゃんたちのことをまとめます。交尾をして何日で生まれてどのように育児をして親離れを迎えるのか。今回は淡々とデータ的にまとめておきますので、ひとつの例として参考になれば幸いです。
目次
交配
交配をしようと考えたのは2021年2月頃で、父親は花くん。ハリんちには当時、ハリンちゃんと血縁関係のない父親候補は花くんしかいなかったので、3月から早速カップリングを行いました。
この時点で、ハリんちでは16回、(しっかり交尾まで済んだ)交配を経験していますが、今回のカップリングはあまりスムーズに進みませんでした。
■3月2日:ハリンが拒否したり、花がモタモタしたりしてうまくいかず。両者集中力が途切れたタイミングでタイムアウトに。
■3月4日:2日と同様、うまくいかず。
■3月5日:ハリン、拒否はしなかったがモタモタでうまくいかずタイムアウト。
※この後、花はカルビとの交尾に成功したため、交配計画を変更して1カ月後に次のチャレンジを実行。
■4月2日:何度か試みてカップリング成功。花はハリンの背中を噛みガッチリと交尾。精子も確認。
4回、延べ1カ月かかってしまいましたが、カップルが成立しました。
交配後~出産後の体重変化
まず、交配前から産後41日目までの体重変化をグラフにしてみたのでご覧ください。
3月28日 418g
4月2日 交配
4月7日 417g ― 交配5日後、ほぼ変化なし
4月17日 432g ― 交配15日後、15g増
4月27日 443g ― 交配25日後、26g増
5月7日 出産
5月27日 359g ― 産後21日、84g減
6月6日 333g ― 産後31日、さらに26g減
6月11日 357g ― 産後36日、24g増
6月16日 367g ― 産後41日、10g増
※測定していない日については不正確です。あくまで目安としてください
妊娠したかどうかの判断材料となる体重の変化は、少なくとも交配から2週間以上経たないと数字に表れません。また、産後、授乳期は赤ちゃんたちに栄養を取られてガンガン体重が減ります。しっかり食べてもらうように気をつけます。
出産~初期育児
死産した子がいないか確認
出産後まず確認するのが、死産した子がいないかどうか。
死産した子はママが食べようとしますが、あごが弱いママの場合、うまく食べられずハウスの隅っこに隠してしまったりすることもあります。放っておいていいことはないので、ネットワークカメラ越しに注意深く確認し、死産の子がいれば素早く木のスプーンで避けて、こちらで埋葬します。今回は幸運なことに死産の子はいませんでした。
第一の関門「初乳」
元気に生まれてきた赤ちゃんに立ちはだかる第一の関門は「初乳」です。重要な免疫物質を含む最初のおっぱいを飲めるかどうかで生きられる子生きられない子が分かれます。通常、ママは自分からおっぱいに誘導したりはせず、赤ちゃんからの求めがあって初めておっぱいをあげます。そのため、それができなかった子は残念ながら育ちません。
この関門を突破すると、生まれた赤ちゃんが亡くなってしまう可能性はかなり減ると言えます。ただ、実際のところ、飲んだのかどうか確認できない場合も多いので、生まれて3~4日は特に不安に感じつつ見守ります。
今回は5名全員が初乳を飲めたことを確認できたので、一安心しました。
産後はとにかく見守る
ここまでの確認ができたら、あとは温度の確認と給餌以外は何もせず、静かに見守ります。飼い主は、ケージを覗いたときのママの反応から現在の警戒レベルを察知します。ハリンちゃんは初産ですが、警戒レベルは平均よりもだいぶ下。これまでの経験上、ママの警戒心は出産直前がピークで、産後から少しずつやわらいでいきます。ただ、産後すぐからあまり警戒しない子もいて、ハリンちゃんはどちらかというとそのタイプでした。
撮影は毎日、朝~昼前に、自然光のみで行います。どの子も、ライトなどで照らされるのは嫌がりますが、自然光であればそれほど気にしません。
産後すぐから2日間ぐらいまでは、ママがケージ内の環境が育児に適していないと判断して不安を表す行動を取ると、育児放棄につながる恐れがあります。基本的には出産前につくった暗くて囲われた環境をそのままにして、人間が介入したりしなければ問題ないはずです。
また、赤ちゃんに人間のにおいがつくことが育児放棄につながるということで、赤ちゃんにはさわりません。ハリんちでは、あえてさわる理由もありませんし、だいたい生後20日ぐらいまでは一切触れません。
赤ちゃんの7日間の成長
赤ちゃんの生後7日目までの成長について簡単にまとめておきます。
赤ちゃんはハリが水分で濡れて寝ている状態で生まれ、半日程度で体が乾くと目視できるレベルの長さであることが確認できます。目は開いていませんし、おなかや手足の毛はまだありません。うんちも自分ではできないので、ママに刺激してもらって排泄します。生後数日は力がなくて、四本足で立ち上がることもできないので、這うようにして動きます。また、仰向けにひっくり返ってもなかなか元に戻せません。ママが手伝ってくれることもあります。
ハリネズミのかわいい仕草のひとつ、後ろ脚で背中やわき腹をカキカキする様子は、たどたどしいものの3日目から見せてくれました。
赤ちゃんがママの口もと、あごのあたりをペロペロとなめるという授乳期特有の行動があります。何の目的でこれをやっているのかはわかりません。逆にママが赤ちゃんの頭を甘噛みすることがありますが、これは急激な成長による新陳代謝で古くなった皮膚をはがしてあげている行動ではないかと思います。
5日目ぐらいになると少し力がついてきて、足を使って他の子の上に登ることができるようになります。ピンク一色だった皮膚も、目鼻を中心に小豆色に色づいてきます。
おとなしくおっぱいを飲んでいたのに急に全員がわちゃわちゃと動いて別のおっぱいに移動するというのもよく見られます。おそらくその乳首に溜まっていたおっぱいがなくなったので、出るおっぱいを探しているのだと思われます。
ハリネズミの乳首は5×2=10個が基本なので、今回5名の子は、1名あたり2個をローテーションで飲めるという計算になります。
6~7日目にかけて、おなかに毛穴が見えるようになり、ハリネズミの得意技、丸まりもやんわりとできるようになります。また、四本足で立つこともできるようになります。
育児の安定期
ママの警戒心の強さ、赤ちゃんの体つきにもよりますが、7~14日程度で安定した授乳期に移行するようになります。警戒心を表すママも少しおだやかになるのが確認できる頃です。
赤ちゃんたちの体も急激に成長します。まず9日目にはきれいな球状に丸まれるようになります。筋肉がしっかり成長している証拠ですね。顔もしっかり小豆色に色づいて子どものハリネズミ特有の子熊、子狸のような面持ちに。
10日目にはアンティング(香油塗り、唾液塗り、泡つけ)を披露。外の世界への興味関心が出てきたというところです。爪もしっかりしてきて、おなかには産毛も生えてきます。
14日目、赤ちゃんたちが少し動き回れるようになったことを受けて、ママはハウスの入口をふさいで出て行かないようガードし、子どもを守ります。
15日目には排泄が自分で行えるようになりました。ケージ床にごま粒程度のうんちが落ちています。体つきもふっくらとして丸みを帯びてきます。
17日目頃、いつの間にやらおなかの毛はふさふさになっています。日を追って見ていると気付かないですが、5日前、5日後というふうに飛ばして比べてみると、急速に成長していることがわかります。
赤ちゃんから子どもに
20日目には、大人が食べるペレットフードに興味を示す子が現れました。ママが食べ終わったフード皿をペロペロと舐め始めたのです。ただし帰り道がわからなくなったのかフード皿の近くでウロウロしていた子に気付いて、ママがハウスまで誘導していました。
23日目には、大事なお鼻がかなり本格化。鼻の穴はしっかりと開いて、鼻全体がみずみずしく濡れるようになりました。また、この日の朝、ハウスのある場所の反対側に全員で団子になって寝ていました。この頃から、外で遊んでいる子をママがハウスに戻さないこともちらほら。戻すときもあって、基準はよくわかりません。
おっぱいが欠かせないわんぱく子ハリ期
25日目には、人間の指を噛んでもらったときに、あごの感触ではなくて歯の感触に変化。歯が生えてフードを噛む準備が整ってきました。フードのにおいに興味を示す子が3名に増え、アンティングしていました。
チョロチョロとハウスを抜け出す子が増えて、ママが首根っこをくわえてハウスに戻すこともありました。
事故防止のため、目が届く時間帯だけホイールを入れていますが、28日目には3名が代わる代わるホイールで遊んでいました。
子ハリちゃんたちの中にはまだフードを食べない子もいて、栄養はまだおっぱいから得ていますが、少しずつ授乳回数は減ってきています。32日目の授乳回数は、確認した限り早朝と午後1時頃と夜11時頃の3回でした。おそらく深夜1回はあると思うので、合計4回程度だと思います。
33日目には、子ハリの1名が、ハウスに空いている小窓から出入りしていました。ハリネズミの習性として登ったりくぐったりするのは好きですが、それができる脚力が備わってきたようです。
ママの体重が急に減った
28日目の朝、ママがいつもの混合フード(Fay、ひかりハリネズ、三晃ハリネズミフード+産前産後用にハーリーの主食 グロース)を食べませんでした。冒頭で紹介した通り、21日目(5/27)から31日目(6/6)にかけてかなり体重が減っていました。母体の健康面が心配なのはもちろん、子ハリたちもおっぱいから十分に栄養を摂れなくなると一大事です。
ひとまず偏食かどうかの切り分けを行うため、各フードを別々に与えてみたところ、三晃のハリネズミフードだけは食べることがわかり、偏食と仮定しました。
体重を増やしてほしいので、この日からこのフードだけを、内臓が活発に動く夜に2回に分けてたっぷりあげるようにしました。
そして35日目には高栄養フードとして与えていたハーリーの主食 グロースも再び食べ始めました。
その結果、産後36日目(6/11)には体重が増え、一安心。出産育児はママの負担がとても大きいのだと痛感する出来事でした。
離乳してわんぱくに
36日目には、3名ほどが、砂場でたどたどしく砂浴びを始めました。それ以前から砂場でうんちやおしっこをすることは覚えていましたが、いつの間にか砂浴びまで会得していたようです。
とはいえ、ママとしてはまだハウスでおとなしくしていてほしいようです。遊びに行った子たちをくわえてハウスに戻していました。
フードを食べた子から緑色のうんち
36日目にはこれまでフードに興味を示さなかった2名を含め、5名全員がフードに口をつけました。ただし、フードを本格的に食べる子が現れた30日目頃から、ケージ床やおしりに緑色っぽいうんちを目にするようになりました。以前から、フードはぬるま湯でペースト状に練っていましたが、それでも消化不良を起こしているということです。
まず、いったんフードの量を減らしましたが、離乳したらフードに移行してもらわなくてはなりません。毎食、フードを数種類テストして、緑色のうんちが出ないものを探したところ、Fayがいちばんよさそうでした。
緑色のうんちが減っていることを確認し、様子を見ながらフードの種類を増やしました。いちばん最後にフードを食べ始めた女の子が最後まで緑がかったうんちをしていて、42日目までそれが続きました。43日目からは、全員がフードを食べてもきれいな茶色(焦げ茶色)のうんちが出るようになり、一安心です。
後日談として、この一連の出来事を獣医さんにも確認しました。やはり消化機能の問題で、うんちの色が安定しないこともままあるとのことでした。おっぱいも何も口にしないのでない限り、様子見で大丈夫だそうです。
5人で初部屋んぽするも…まだママが恋しい様子
40日目にはママが朝ごはんを食べているすきに、子どもたちだけを部屋んぽスペースに移して遊んでもらいました。すみかにはないおもちゃがたくさんあって、それぞれがチョロチョロ、スンスンして楽しんでいました。
ですが10分ほど経つと、誰かがピーピーとママを呼び始めました。ママがいないことに気付いて不安になったのでしょうか。それとも単におっぱいがほしくなったのでしょうか。
ともあれ、すぐにみんなをすみかに戻しました。その時ママはもうごはんを平らげ終わって、ハウスの外でうとうとしていましたが、みんなが帰ってきてママもハウスに戻ると、5名は大興奮・大歓迎でおっぱいをもらっていました。
40日を過ぎて生活リズムに変化が
これまで、子どもたちは昼おっぱいを飲んだらしばらくみんなで熟睡するというのがパターンでしたが、40日を過ぎて少し変化が出てきました。13時半~14時前ぐらいにみんなお散歩に出かけて、ママがハウスに帰るとみんな戻っておっぱいを飲むという流れに変わったのです。
ハリちゃんは基本的に日中は寝ていますが、若ければ若いほど昼でもチョロチョロお散歩することが多いです。子どもたちに体力がついてきて、動き回りたい衝動が強くなってきていることの表れでしょう。
小さくてもやっぱりすき間が好き
子どもたちがずいぶん活発になってきたので、47日目にはすみかをプチリニューアルして広々と暮らせるようにしました。すると48日目にはフェンスとハウスの狭いすき間を発見して、そこに入ったり、重なって寝たりと人気スポットになりました。狭いところに入れば自分より体の大きな外敵から身を守ることができるということで、本能的に安心なのかもしれません。
ママははっきりと子離れをしなかった
この日以降は、特に男の子たちが広い場所を走りたがるようになり、部屋んぽスペースに放しても、40日目の時のようにママを恋しがらずにのびのびと遊ぶようになりました。
完全離乳の日はバラバラにやってきますが、基本的にハリネズミ用フードに興味を示すのが早かった順に離乳を迎えます。ただし、しっかりと離乳したかどうかを見極めるのは至難の業です。50日を過ぎると、ママの乳房からあまりおっぱいは出なくなってくるようで、単純におっぱいを飲む仕草をしているだけで、実際は飲んでいないこともあるからです。
今回は53日目に5名全員でおっぱいを飲んでいる様子を確認しましたが、55日目以降は(少なくとも人間が見ている間は)おっぱいをあげているのを目にしませんでした。55日目は、ピーピーとママに訴えていた子がいたものの、ママはおっぱいをあげませんでした。
親子の様子と体重を確認して巣立ち
子どもたちの体重はやはりフードを食べ始めてから急激に増え始めますが、フードを食べ始めてもしばらくはおっぱいも飲むことと、歯の成長には個体差があるので、少し様子を見ます。
ハリんちでは体重200g程度をお迎え準備ができたかどうかの基準にしていて、今回、60日目に全員の体重を測定したところ、男の子1名のみ191gで、他4名は全員200g超。
この頃、毎日ママの子離れはいつ来るかと見ていたのですが、どうやらハリンちゃんははっきりと子離れをしないタイプで、子どもたちがいてもいなくてもええでといった様子の接し方を続けていました(ハリンの母、姫ちゃんもこのタイプでした)。
そのため、今回は人間の判断で60日までとして、親子、オスメスを離しました。2カ月ともなると、男の子のうち早い子には生殖機能が備わる可能性があるためです(遅い子は8カ月程度まで性に目覚めないので、個体差は大きいです)。
もし今回の子が全員女の子だったなら、もうちょっと一緒に暮らしてもらったかもしれません。それでも、ママが甘えてきた子に噛み付いて「独り立ちしなさい!」と促したり、子ども同士でいさかいを起こすようになったら別々にします。他の子と一緒にいることをストレスに感じる子もいれば、気にしない子もいます。ケースバイケースです。
お迎えするならしっかり育った子を
最近、ペットショップ・ブリーダーのどちらも、フードを食べるようになったからと親から引き離し、体重150g程度や生後45日程度で販売しているケースを見かけます。
ハリちゃんたちは、ママのおっぱいから必要十分な栄養素を吸収し、骨や内臓、歯の基礎をつくります。そして母乳をもらって育つという大きな目的が満たされてから、フードで独り立ちできる体づくりを行い、並行して、自分と周囲の世界に気付き始め、仲間や人間との関わりについて学んでいくようになります。その過程で、離乳後に子ども同士でいさかいが発生することもあります。
ここまで達するのに、実感としてやはり60日はかかるのです。ハリんちとしては、自我の発露をママやきょうだいたちと一緒の時に迎えるのが生き物として自然なことだと思っています。
もちろん、45日程度の子と60日以上の子のお迎えによる精神的・肉体的な差があるかどうか、エビデンスはありません。ですので、あくまで「こう考えています」としか言えませんが、60日以降の子のほうがあらゆるリスクは減ると思います。
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