最新の研究により、これまであまり知られていなかった、ハリネズミに関係するウイルスが発見されました。その名は「アフリカピグミーハリネズミアデノウイルス1型」、通称「AhAdV-1」です。ハリネズミだけでなく、フェレットやミーアキャットといった他のエキゾチックアニマルにも広がっているそうです。
風邪のような症状になるハリネズミのアデノウイルス
今回は、福岡県北九州市の小泉ネスト動物病院院長・小泉伊織氏らの研究チームが2025年6月に発表した論文の概要をお話しします。なるべく正確を期するよう善処しましたが、一次情報は下記を参照してください。
一次情報の論文はこちらです。
参考 Serological evidence of African pygmy hedgehog adenovirus 1 in exotic companion animalsPubMed Central
「アフリカピグミーハリネズミアデノウイルス1型(AhAdV-1)」は、2020年に日本で重度の気管支肺炎で死亡したヨツユビハリネズミのコロニーから初めて同定されたウイルスです。このウイルスに感染したハリネズミやフェレットは、鼻水やくしゃみ、咳、そして呼吸が苦しそうになるなどの「風邪」に似た症状を示すことが研究でわかっています。
特に、すでに他の病気を抱えている動物や、体が弱っている動物で、このウイルスが重い症状を引き起こす可能性があると考えられているそうです。
ただ、アフリカピグミーハリネズミアデノウイルス1型(AhAdV-1)とワンちゃんのアデノウイルスは型が違います。犬伝染性肝炎を引き起こすのは犬アデノウイルス1型(CAdV-1)、犬喉頭気管炎を引き起こすのは犬アデノウイルス2型(CAdV-2)です。
コロナウイルスにもたくさんの種類があるのと同様に、アデノウイルスにもたくさんの種類があります。
このウイルスが種を超えて広がっていることを研究チームが発見
通常、アデノウイルスは特定の動物の種にしか感染しないと考えられています。しかし、小泉ネスト動物病院に来院した17種のエキゾチック動物を対象に血清学的調査を行ったところ、このAhAdV-1がハリネズミ(真無盲腸目)だけでなく、フェレットやミーアキャット(食肉目)にも見つかったのです。
さらに、2015年にカナダの野生スカンクから見つかったウイルスと非常によく似ていることも判明しました。これは、このウイルスが、私たちが考えているよりもずっと広い範囲で動物から動物へと伝わっている可能性を示しています。
先ほど紹介した犬アデノウイルス1型は、犬やオオカミ、イタチ、アライグマ、クマなどが主な宿主ですが、これらは全て食肉目に属する動物です。そして2型のほうは、ほぼ犬だけに感染します。このように、アデノウイルス科のウイルスは従来、感染対象が狭いと考えられてきました(これを「種に特異的」と言います)。
それに対してアフリカピグミーハリネズミアデノウイルス1型(AhAdV-1)は、真無盲腸目と食肉目という、異なる大分類をまたがって感染が広がることがわかった、ということです。
このことから、研究者はこのウイルスが人と動物の間でも感染する可能性があると指摘しています(Zoonoses、ズーノーシス、人獣共通感染症と呼ばれています)。
AhAdV-1はどこから来たのか?
このAhAdV-1ウイルス、まだその感染源や、どのようにしてペットの間で広まっているのかは詳しくわかっていないそうです。でも、日本でペットがどう流通しているかを考えてみれば、ペットショップや繁殖施設、動物病院など、複数種の動物たちが接触する場所で感染が起こっている可能性は否定できません。
ハリんちではハリネズミしか飼育していませんが、複数の動物を飼っているご家庭では、こうした未知のウイルスが動物種を飛び越えて感染するリスクがあるという点、注意が必要ですね。もし体調を崩した動物がいたら、他の動物から一時的に隔離することも検討すべきかもしれません。また、手洗いや飼育用品の清掃などをこまめに行うようにしましょう。
そもそも、ハリちゃんの鼻水やくしゃみといった呼吸器系の症状はよく見かけるものです。今後、それがAhAdV-1ウイルスであると特定できれば治療もスムーズに進むはず。さらなる研究を期待したいところです。
参考 Serological evidence of African pygmy hedgehog adenovirus 1 in exotic companion animalsPubMed Central病気関連の記事
ハリんちで経験したハリネズミの病気についての記事です。併せて参考になれば幸いです。




















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