多頭飼いを長く続けていると、病気のハリネズミちゃんたちの看護をする時間もまた増えます。ハリネズミの病気もいろいろ、看護の方法もいろいろですが、ここではその一例として、ハリんちでこれまで実践してきた看護のノウハウをまとめてみました。
目次
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食べないとき
ハリネズミの異変でいちばん多いのは「食べなくなった」ということ。内臓の不調、歯肉炎、風邪、偏食などなど、食べなくなる原因はとても多いです。そうなったらまずは動物病院で診てもらうのが一番ですが、併せて試してみてほしいことをいくつか紹介します。
大好物に薬を混ぜて一口で食べさせる
食べないときにまず考えたいのが、「どうやったら食べてくれるか」です。強制給餌は明らかにハリちゃんたちにとって楽しい食べ方ではないので最後の手段に取っておき、まずは自力で食べてくれる道を探りましょう。
そして病気で食べない子にはまず薬、次にフードです。薬が効いてくれればじきに食べてくれるようになるので、まず薬です。
最初に試したいのは、そのハリちゃんが一番好きな食べ物または飲み物をひとくち分だけ用意して、そこに薬を混ぜて、パクッまたはペロッと一発で薬を飲ませる方法です。
これを実践するためには、いろいろな食べ物・飲み物を試して大好物を見つけておく必要がありますが、迷ったら香りの強いもの(例:果物の匂いがするゼリーやミルク)がお勧め。大好物を少量用意して、薬と混ぜてあげてみてください。
カロリーエースを活用する
大好物に混ぜても薬を飲んでくれない場合、次にカロリーエースを試してみてください。病中でも強烈な食いつきパワーを発揮してくれる強い味方です。
自力で食べられる子にはムースタイプの「猫用介護食 ささみ」、強制給餌が必要な子には「猫用流動食」です。もうちょっと言うと、食いつきパワーを発揮するのは鶏肉が主原料の介護食のほうで、流動食は乳製品が主原料となっています。
ただし、カロリーエースだけをたくさん食べさせるとうんちが緩くなる子がいます。なので与えるときは、いつも食べているハリネズミフードに対して風味付け程度、ちょっと混ぜるのがちょうど良さそうです。
一例として現在闘病中のカルビちゃんのごはんでは、まず薬だけ飲んでもらうために、ほんの少しのカロリーエースを数滴の水で溶いて、薬を混ぜて飲んでもらっています。
スープが済んだらメインディッシュです。香りづけ程度にカロリーエースを混ぜたいつものハリネズミフード(+キャットフード)を差し出して、食べてもらっています。
そして3〜4日経ったら残りは捨てます。冷凍保存するという手もあるのですが、風味が落ちます。風味はカロリーエースを使う大きな理由なので、ハリんちでは(もったいないですが)余ったものは処分しています。
不調時の絶食で気を揉みすぎない
これは自分に向けたメッセージでもあるんですが、ハリネズミはちょっとした風邪でも2〜3日何も食べてくれなかったりします。もう明らかに辛そうな顔をしますし、体重もドカンと落ちたりして、飼い主としては心配で心配でたまらないわけです。
でも後からふり返ると、2〜3日後には食べるようになって体重もすっかり戻り、本人も「なんかあったっけ?」みたいな顔で暮らしていることがほとんどなんですよね。だから、動物病院で診てもらったあとは、何も食べなくてもお薬だけはきちんと飲んでもらって、気を揉みすぎずに必要なお世話だけして待つのが一番です。
偏食予防のために
健康なのに食べない、いわゆる偏食をする子はハリんちにも数名いました。割合としては10%程度でしょうか。でもどの子も一時的なもので、解消しています。参考までに、うちで偏食防止のためにやっていることをいくつか紹介します。
普段からいろんなフードに慣れてもらう
ぜひ小さいうちから食べ慣れておいたほうが良いと思うのは、ハリネズミ用フード3〜6種類程度と、ハリネズミが飲めるミルクなど栄養価の高い飲み物(粉末を水で溶くもの)、乾燥ミルワームです。
ハリネズミ用のフードで言えば、「ひかりハリネズ」「Fay」「マズリ インセクティボラダイエット」「ハーリーの主食」「三晃商会ハリネズミフード」「オッティモ10」あたりに食べ慣れてもらっていれば、メーカー欠品などで手に入らない場合でも何かで代用できますし、食べ飽きる可能性も減らせます。
「固形は食べる気がしない。でも、ミルクなら」という子もいますから、ミルク系の飲み物も、好きで飲んでくれるものがないか、小さい頃に見つけてあげるのが良いと思います。薬を飲んでもらうときにも使えます。
乾燥ミルワームも偏食時の強力な武器になり得ます。好きじゃない子もいるようですが、その場合は別のお気に入りを見つけてあげてください。大事なのは、そのハリちゃんがすごく好きな食材を飼い主が手札として何枚持っているかです。
複数のフードを混ぜる
いろんなフードに食べ慣れてもらうことと関連しているのですが、日常的に複数のフードを混ぜてあげるようにすると、やはり偏食は減るように思います。ハリんちでは咲ちゃんが一時期、三晃商会ハリネズミフードだけ丁寧に避けて残していたんですが、気にせず出し続けたらまた食べるようになりました。
おまけ:高齢ハリには水分多めのごはん
一般的に動物は高齢になればなるほど喉の渇きを感じにくくなり、自発的な水分補給が疎かになりがちだと言われます。例えば「うんちが前よりも硬いな」などと感じる場合は要注意、ですね。
ハリネズミの高齢って何歳からでしょう? ハリんちの子たちの普段の暮らしぶりを見ていると、3歳半ぐらいからは気をつけて見てあげたほうが良さそうです。ハリんちでは、そういう高齢ハリちゃんたちには、水分量の多いふやかしごはんをあげて、なるべく食事からもお水を摂ってもらうようにしています。
ただ、ふやかしばかりだと歯と歯茎の健康に良くないということで、ふやかしフードを食べきってからカリカリを適量食べてもらいます。このようなふやかし→カリカリという2段構えのやり方でごはんをあげることで、水分摂取とデンタルケアを両立できたらなと考えています。
歯のトラブル
ハリネズミは、歯肉炎や口腔腫瘍(扁平上皮癌)ができてしまうことも多い動物です。ハリんちの観測範囲内で感じた、日常のお世話で注意するポイントは3つあります。- 食べるときにクチャクチャと音を立てる
- 食べるスピードが以前よりも明らかに遅い
- 片側だけで噛む仕草をする
抜歯後は少し食欲がなくなる子もいましたが、薬の力も借りて、数日で回復しています。そしてどの子も抜歯前より食べっぷりが良くなりました。
うんちの調子が悪いとき
食べないという異変に続いて「うんち」のトラブルもまた多いです。ハリんちでも消化器症状の出る病気にかかる子が多く、緑色便、下痢、血便など、いろいろなタイプの便で苦しむ子のお世話をしてきました。
砂場の砂を細かくする
うんちの調子が悪いときは水っぽさが増して臭いもきつくなりがちです。もしその子が砂場を使えているなら、砂場の砂を細かいタイプのものにすることで、臭いと汚れの拡がりを抑えられると思います。
放っておくと平気でうんちを踏んづけて足に装着したりする子たちですから、出した時点で包み込まれるように細かい砂を用意しておけば、踏んでも足裏に付かず安全です。
これは病気のストレスからなのか、薬の副作用的なものなのか。その理由はわからないのですが、病気と関係がありそうだなぁ、と思っています。
ペットシーツを使う
全てのうんちを砂場でしてくれる子は少ないと思います。水分が多いうんちをそこらでされたとき、ペットシーツを敷いていれば散らばるのを防げます。ハリちゃんの身体が汚れるのも、ある程度防いでくれるでしょう。
ちなみに、ペットシーツはかじったり食べちゃったりするトラブルが付きものです。腸閉塞などに繋がる恐れがあるので、糞臭を抑える成分を配合しているなど、香りが付いていたりするものは避けて、なるべくシンプルなものを選んだほうが良いと思います。ハリんちでは山善のペットシーツを使っています。
ちなみに、ハリんちでは2歳以上の女子のケージにはペットシーツを敷いています。女子のハリちゃんに多い子宮内膜炎の兆候、微量の血尿を発見しやすくするためです。
汚れたら拭くより洗い流すほうが良いかも
下痢をしているときは、特に尻尾のつけ根のところに汚れが付いたり、あかぎれのように切れてしまったりすることも多いです。そういうとき、ウェットティッシュなどで拭いてあげたいと思う飼い主の心は理解できるのですが、かえって皮膚に刺激を与える危険性もあります。もしゲンタマイシン硫酸塩の軟膏などを処方されていれば、神経質に拭かずに、薬を塗ってあげるだけでも良いかもしれません。「いや、それどころじゃなくて」という場合もありますよね。例えば、おしりから後ろ足全体までうんちがべっとり、みたいな状態とか。そういうときは足湯も検討してみてください。本人の体調と体力と相談ですが、人肌の足湯に入れて、お湯で軽く洗ってあげるほうが清潔になり皮膚への刺激も少なく済みそうです。
動けないとき
ハリんちでは、ハリネズミふらつき症候群(WHS、Wobbly Hedgehog Syndrome)や原因不明の後肢のふらつき、脳神経疾患の進行により、動けなくなった子の看病も行いました。
強制給餌では少し身体を起こしてあげる
ハリんちでは動けなくなった大吉くんと快くんにカロリーエースの流動食を使って強制給餌を行いました。動けない子は暴れる子とちがってあまり気にするポイントはないのですが、念のため、誤嚥を防ぐ目的で少し頭を高くしてから流動食を流して食べてもらっていました。
マッサージをする
これはハリんちでは行っていないのですが、参考までに一般論のお話です。
人間を含め動物は歩くことで足の裏に圧をかけて、血圧の低い静脈血を心臓までスムーズに送り返しています。いわゆる血行促進というやつです。
なので、寝たきりの子に足裏から胴体に向かってさするマッサージは、ある程度効果が期待できそうです。ただ、ハリネズミは基本的に触られるのが好きな動物ではないので、動けたときに触られるのを嫌がっていた子は、動けなくなってもやはり触られるのは嫌だろうと思います。
床ずれを防ぐ
こちらも一般論のお話です。正直なところ、ハリネズミは体重が軽いこともあってか、ハリんちでは床ずれは経験したことがありません。気になるようでしたら、汗をかいていないか、逆に冷えていないかの確認も兼ねて、たまに姿勢を変えてあげるのも良さそうです。
どんな病気でもとにかくまずは暖かい環境を
ハリネズミは寒いのが苦手な動物です。でも彼らは健康なとき、多少温度が変動しても気にしていないような態度を取りますから、飼い主も「なーんだ、平気じゃん」などと高をくくってしまったりします。
彼らにとっていかに寒さが辛いのかは、病中の看護をするとよくわかります。予想外に冷えた秋冬の朝方、室内がいつもより2~3℃寒くなっただけで、病気の子の調子が悪くなり、吐いたりしたのです。
とにかくケージの中と床は暖かくしてあげること。温度計で室内の温度を、放射温度計でケージ床温を計測し、調整することをお勧めします。
ちなみに、ハリちゃんたちが快適に感じる温度には個体差があるようで、24℃ぐらいでも全然平気な子もいます。でもハリんちは多頭飼いの環境なので、寒がりな子に合わせて、一年中26℃~28℃ぐらいの高めの温度設定を保っています。
また、ハリちゃん本人についても、抱っこを嫌がらない子なら、お腹が冷えていないか触って確認してあげてください。調子が良い日のお腹の温かさを覚えておくと良いと思います。
サーモスタット付きの暖房をメインにして、寒暖差がなるべく起こらないようにすると、病中でも元気な姿を見せてくれる日が増えるはずです。
病気関連の記事
ハリんちで経験したハリネズミの病気についての記事です。併せて参考になれば幸いです。
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